社長も社員も知っておきたい労働基準法。優しく解説していきます。
労働基準法とは、本来対等であるべき労働契約が使用者側に有利になりやすい点を考慮して、労働者保護のために制定された法律です。
労働基準法第1条においては、労働条件の原則として以下のとおり定められています。
まずは第1項として、
「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」
と規定されています。これは日本国憲法25条1項の「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という生存権の規定と同じ趣旨のものであり、「労働基準法各条の解釈にあたり基本観念として常に考慮」されなければなりません。
次に第2項として、
「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」
と規定されています。法律で定めるのあくまでも最低の条件であるから、より良い職場環境の実現へ向けて労使双方で努力しましょうという趣旨です。
ちなみに、「労働条件を低下させる」とは、自社の労働時間が7時間であったのに、労働基準法に基づき8時間としたような場合を指します(労働基準法では1日の労働時間は8時間までと定めています)。
労働基準法第2条では、労働条件の決定について定めています。
第1項として、
「労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。」
と規定されています。この条文は、その内容の通り、労使が対等な立場で労働条件を決定する旨を定めていますが、実態としては、労使が労働条件を決定する際、多くの場合は、賃金を払う側の使用者が、労働者より優位な立場に置かれます。
つきましては、使用者が一方的に労働条件を決定したり、変更したりすることがないよう労使協議の上で、労働条件を決定するべきであるという意味合いが強いと言えるかもしれません。
なお、ここで言う「対等な立場」とは、形式的のみならず、「実質的に対等な立場」であることが求められています。
次に第2項として、以下の通り定められています。
「労働者及び使用者は、労働協約、就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。」
【労働協約】
労働組合と使用者又はその団体との間で締結される協定。
労働条件その他に関する事項を書面にて作成し、両当事者が、署名又は記名押印することで効力を発する。
【就業規則】
端的に言うと、「労働者の労働条件等を定めた社内ルール」。
原則として、使用者が作成します。
【労働契約】
使用者と労働者の間で締結された、労働条件等の契約。
上記には、効力の優先順位があり、以下の通りです。
法令(労働基準法等)≧労働協約≧就業規則≧労働契約
ちなみに、第2条については、第1条と同様に、一般的な原則を定めたに訓示的な規定であり、罰則は設けられていません。
均等待遇について定めた、労働基準法第3条について解説します。
労働基準法第3条は、次のように定められています。
「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」
この規定は、日本国憲法第14条
「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」
とその趣旨を同じくするもので、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由とした、差別的な取扱いを禁止したものです。
なお、労基法3条の「その他の労働条件」には、解雇、災害補償、安全衛生、寄宿舎等に関する条件も含むとされています。
~判例紹介~
「その他の労働条件」に「採用」を含むかどうかで争われた三菱樹脂事件
「その他の労働条件」に「採用」は含まれないとされました。つまり、使用者は、採用の自由を有するということになります。
労働基準法第4条を解説します。
労働基準法第4条は、以下の通り定められています。
「使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。」
この条文のポイントは、「女性であることを理由として」という点と「賃金について」という点です。
たとえば、男女間で賃金に差が生じたとしても、その理由が性別ではなく、職務内容、能率、技能、年齢、勤続年数等になっている場合は、本条違反にはなりません。
また、賃金以外の労働条件の差別的な取扱いについても、本条が効力を有する部分ではありません。(もちろん差別的取り扱いをしても良いというわけではなく、男女雇用機会均等法等で禁止されています。)
なお、ここで言う「賃金」とは、賃金額のみならず、賃金体系、賃金形態等も含まれるため、例えば、男性は一律「月給制」、女性は一律「日給制」という形で運用することは、違法になります。
では、女性を「不利」ではなく、「有利」に取り扱うことについては、いかがでしょうか?
実は、これも、女性であることを理由とした差別的取扱いに該当し、本条に抵触しますので、注意が必要です。
「差別的取扱い」を具体的に説明すると、、、
例えば、結婚や出産で退職する女性従業員に対して、退職金を割増又は加算するケース等は該当しますが、生理休暇を有給とする程度は、本条で抵触するほどの差別的取扱いとはされていません。
また、就業規則等で男女の差別的取扱いを規定していたとしても、実際に運用されていなければ、本条違反とはならないとの通達も出ています。(ただし、その規定は無効となります。)
つまり、実態として、差別的取扱いが行われているかどうかが、本条違反になるかどうかのポイントになります。
労働基準法第5条を解説します。
労働基準法第5条は、以下の通り定められています。
「使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。」
この規定は、日本国憲法18条
「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」
とその趣旨を同じくするもので、労働者の意思に反した強制労働を禁じたものです。
強制労働の禁止に違反した場合には、労働基準法最も重い罰則(1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金)が課せられています。
長期労働契約、前借金契約、強制貯金、労働契約不履行に関する賠償予定契約なども精神又は身体の自由を不当に拘束する手段とされ、「不当」とは、「不法」なものはもちろん、社会通念上認められないものも含まれます。