わが国では、一般に定年は60歳となっています。
これは、定年年齢を定める場合には60歳未満とすることができないと法律で定められているからです。
また、定年後に関しても決まりがあります。
公的年金の支給開始年齢が65歳に引き上げられたことから、会社は希望した労働者を原則として65歳まで雇い続けなければなりません。
よって、現在では、65歳までの雇用環境は整っているといえます。
65歳までの安定した雇用のために
定年年齢を65歳未満に定めている会社は、65歳までの安定した雇用を確保するため、次のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を実施しなければなりません。
- 65歳までの定年の引上げ
- 65歳までの継続雇用制度の導入
- 定年制の廃止
厚生労働省「平成29年高年齢者の雇用状況」 によると、定年を引き上げたり、定年制を廃止する会社は2割程度であり、8割強の会社が継続雇用制度の導入を選択しています。

通常、継続雇用制度とは60歳定年後に1年契約を更新しながら雇用する形態をいいます。
労働時間や賃金などの労働条件は、会社と労働者の間で決めることができるとされています。
とはいえ、定年後再雇用時には賃金は下がることが普通です。
そこで、働く高齢者のモチベーションを保つため、手取りの金額が少なくなりすぎないような制度が設けられています。
それが、高年齢雇用継続給付です。
高年齢雇用継続給付とは
高年齢雇用継続給付は雇用保険からの給付です。
これは、定年後再雇用時(継続雇用時)には賃金が低下することが一般的なことから、高年齢者の就業意欲を維持・喚起し、65歳までの雇用の継続を援助・促進することを目的とした給付金になります。
高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の2種類がありますが、高年齢雇用継続基本給付金を中心にみてみましょう。
高年齢雇用継続基本給付金を受給できるのは、以下の2つの要件を満たした方の60歳以後の賃金が、60歳時点の75%未満となっている場合です。よって、定年後の賃金が定年時の75%以上であれば、この給付は受けられません。
- 60歳以上65歳未満で雇用保険の被保険者であること
- 雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あること
ハローワーク「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続きについて」
高年齢雇用継続基本給付金の支給例
高年齢雇用継続基本給付金の支給額は、「支給対象月に支払われた賃金額 × 支給率」となります。
賃金の低下率が75%以上であれば高年齢雇用継続基本給付金は不支給、低下率が61%以下であれば支給率は15%となり、賃金の低下率に応じてその支給率が決められています

支給期間は、労働者が60歳に到達した月から65歳に達する月までです。
一例をみてみると、60歳到達時の賃金月額が30万円である場合、支給額は次の通りです。

60歳以降の収入を考える
通常、60歳以降の収入は賃金と高年齢雇用継続基本給付金となります。
年金と雇用保険との併給調整についても知っておきましょう。
生年月日によっては65歳以前に公的年金を受給することができますが(在職老齢年金)、高年齢雇用継続基本給付金を受給すると年金の一部が支給停止されてしまいます。
支給停止される年金額は、最高で賃金(標準報酬月額)の6%に当たる額です。
このように、定年後も働き続ける場合には雇用保険や年金が関わってきます。
定年後の収入を考える際には、こうした制度の概要を押さえるとともに、 会社の就業規則や、再雇用規定などで定年後の賃金がどうなるかを確認しておきましょう。