年度替わりには転職や退職をする方が多くなります。通常、会社員の方は健康保険と厚生年金に加入していますが、会社を退職すると、国民健康保険と国民年金に加入することになります。国民健康保険と国民年金への切り替えはご自身で行う必要がありますので、忘れずに手続きを行いましょう。今回は、転退職後の年金や健康保険についてみてみます。
転職後の年金と健康保険は?
転職の場合には、引き続き健康保険と厚生年金に加入します。転職前の会社が健康保険と厚生年金の資格喪失の手続きをし、転職先の会社が新たに健康保険と厚生年金の資格取得の手続きをしますので、ご自身で手続きを行う必要はありません。
退職後の年金は?
60歳未満の方が会社を退職して、しばらく次の会社に入らない場合には、国民年金第1号被保険者となります。退職して、自営業者として働く場合も同様です。なお、国民年金への加入義務は60歳までですから、60歳以上の方は第1号被保険者にはなりません。
国民年金への切り替えの手続きは、住んでいる市区村町で、ご自身で行う必要があります。会社から発行された退職証明書や資格喪失証明書など、退職日が確認できる書類をもって手続きを行いましょう。
第1号被保険者は、納付書や口座振替などで保険料を自ら納めなければなりませんが、保険料を納めることが経済的に困難な場合には、免除や納付猶予の制度があります。ちなみに、令和4年度の国民年金保険料は、月額16,590円となりました。国民年金には、一定期間の保険料をまとめて納めると保険料が割引となる「前納制度」がありますから、利用を検討してみましょう。
配偶者の扶養に入る場合には国民年金第3号被保険者となります。第3号被保険者の保険料は配偶者が加入している厚生年金から拠出されるので、本人の保険料負担はありません。
退職後の健康保険は?
健康保険の場合には、いくつかの選択肢があります。
わが国は国民皆保険制度となっていますから、いずれかを選択しなければなりません。
① 健康保険に加入している家族の被扶養者になる
年間収入が130万円未満であって、かつ、健康保険に加入している家族の年間収入の2分の1未満であるなど、一定の要件を満たす必要があります。加入の手続きは、その家族の勤務先が行います。
② 個人で引き続き健康保険に加入する(任意継続被保険者)
一定条件のもと、健康保険に継続して加入できます(2年間)。退職日の翌日から20日以内にご自身で手続きが必要です。保険料は、退職時の標準報酬月額に保険料率をかけて算出しますが、退職しているため保険料の会社負担はなく、全額自己負担となります。
③ 国民健康保険に加入する
住んでいる市区村町で手続きが必要です。 保険料(税)は、前年の所得や、国民健康保険の世帯人員数などに応じて決定されます。自治体によって計算方法が異なりますから、確認をしてみましょう。
基本的に、どれを選んでも保険給付や病院にかかった際の自己負担割合は変わりませんので、一般に、保険料負担を考慮して選ぶことになります。
①であれば保険料負担はありません。③の場合には、保険料の算定ベースが前年の所得になるなど、その計算方法が健康保険とは異なりますから、注意が必要です。ご家族の扶養に入るのでなければ、②の任意継続被保険者になった場合の保険料と、③の国民健康保険料を比較して、安い方に加入するのが一般的です。
以上のように、年金や健康保険には、退職に伴う手続きがあります。手続き漏れによる年金の未納を防ぎ、また、病院に行きたいのに保険証が手元にないという状況を避けるため、役所に確認をしながら、余裕を持って手続きを行いたいものですね。