就職して初めての給料日。給与明細をもらってみると、意外と手取りが少なくて驚くものです。給与支払いの5原則として、「給与の全額払い」がその一つに定められてはいますが、例外として本人の同意がなくても天引きできるものがいくつか認められています。
その代表が所得税と住民税。
所得税は国に納める国税で、住民税は地方に納める地方税です。われわれが受ける行政サービスは、国と地方の間で分担して提供されており、その費用を賄うものが国や地方に納める税金なのです。ここでは社会人として最低限知っておきたい税金の知識を紹介しましょう。
所得税と住民税の大きな違いは?
所得税と住民税では税金計算の対象年度が異なります。所得税はその年の1月1日から12月31日までの所得に対して課せられ、住民税はすでに確定している前年の所得に基づいて課税されます。
本来、所得税は1年間が終わらなければ確定できませんから、毎月天引きされている所得税は大まかな金額です。よって、1年間の所得が確定する年末に年末調整を行ってその過不足を精算します。
一方、住民税は前年課税です。
ですから、2022年6月から納める住民税は2021年の所得に基づくものとなります。転職して大幅に給与が下がった場合であっても、前年の所得に基づいた住民税額を負担することになるのです。なお、新卒採用で4月に入社するような場合、前年の所得がなければその年度に住民税はかかりません。差し引かれる税金は所得税のみとなります。
税率も異なります!
所得税と住民税は、税率構造も大きく異なります。所得税は所得が高くなれば税率も上がります(超過累進税率)が、住民税は一律10%の税率となっています(比例税率)。所得税率は5%から45%までとなりますから、所得税と住民税を合わせた税率は、最大で55%となります。
住民税には所得割の他に均等割が設けられています。これは所得の大小にかかわらず、一律5,000円が課税されるものです。
所得税計算の流れは?
所得税計算の大まかな流れをみてみましょう。所得税は1年間の所得に対して課せられる税金です。収入(額面金額)に対して課せられるわけではありません。1年間の収入から様々な控除を行い、最終的な所得金額を確定させて税額を計算します。
収入と所得は概念が異なりますので注意しましょう。
会社員の場合、まずは1年間の収入から一定のルールで計算する給与所得控除額(会社員の経費と考えられるもの)を差し引いて給与所得を算出します。
そして、給与所得から様々な所得控除を差し引いて課税所得を求めます。
ですから、所得控除が多ければ多いほど課税所得は小さくなり、所得税も少なくなります。所得税額は、こうして求められた課税所得に所得税率を掛けて算出します。
なお、所得控除とは、所得税を計算するときに各納税者の個人的事情を考慮するもので、例えば、扶養家族が多ければそれだけ生活にお金がかかりますから、税金を安くしようとするものです。
所得控除には、基礎控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除、地震保険料控除などがあります。住民税の場合も計算の流れは同じですが、基礎控除や扶養控除など所得控除の額が異なるものがあります。
最後に、税金以外にも大きな金額が給与から差し引かれますので知っておきましょう。
何が引かれるかというと、厚生年金保険料や健康保険料(40歳以上は介護保険料も)、雇用保険料です。これらも本人の同意なしに差し引くことが認められています。結局、給与から天引きされるものをまとめると、所得税、住民税、厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料、雇用保険料となります。
税金以外に引かれるものについては、後日まとめてみたいと思います。