わたしたちの日常生活に密接に関わる社会保険。
年金や健康保険が無い状況を考えるとゾっとしますが、少子高齢化が進むなか、財政的に制度の運営は厳しい状況にあるといえます。
基本的に「負担増・給付減」の方向に進まざる得ないでしょう。
今日は、令和2年4月から変更された事項をみてみます。
引き上げられた国民年金保険料
令和2年度の国民年金保険料は、前年度より130円引き上げられて月額16,540円となりました。
4月分の納付期限は5月末となります。
国民年金保険料は自営業者や20歳以上の学生が負担するものですが、国民年金においては、一定期間の保険料をまとめて納めることにより保険料が割引となる「前納制度」があります。
厚生年金にはないお得な制度ですから、ぜひ利用を検討してみましょう。
詳細はこちら(日本年金機構HP)。
年金額はUPも、喜べない!?
令和2年度の年金額は、0.2%のプラス改定となりました。
厚生労働省「令和2年度の年金額改定について」
年金額は物価(物価変動率)や賃金(名目手取り賃金変動率)に応じて改定されます。
令和2年度の年金額の改定には名目手取り賃金変動率(+0.3%)が用いられましたが、マクロ経済スライドによる調整(-0.1%)がなされたため、改定率は+0.2%となりました。
日本は少子高齢社会に突入しています。
保険料を負担する現役世代が減少し、年金受給者の平均余命は延びているので、物価や賃金がプラス変動したとしても、年金額の上昇は抑えるという制度がマクロ経済スライドによる調整です。
本来であれば物価や賃金の上昇に応じて増加する年金額を自動的に抑制するための仕組みですから、実質的な年金の価値は目減りします。「0.2%のプラス改定」という部分にだけ目をとらわれないようにしてください。
国保料・後期高齢者医療費の限度額UP!
国民健康保険・後期高齢者医療の保険料(税)の賦課(課税)限度額がUPしました。
※ 自治体によって保険料としているか保険税としているかが異なる
国民健康保険は年960,000円から年990,000円に、後期高齢者医療は620,000円から640,000円へと、それぞれ引き上げられています(令和2年度分の保険料(税)から実施)。
一般に、現役時代は健康保険、定年後は国民健康保険、75歳以降は後期高齢者医療という流れとなります。
※ 自営業者やフリーランスなど、会社に雇われずに働く人は75歳になるまで国民健康保険
国民健康保険や後期高齢者医療の保険料は所得よって定められており、一定の限度額が設けられておりますが、どんどん限度額が引き上げられている状況です。
取れるところからは取ろうということなのでしょう。
現役世代の保険料は?
協会けんぽにおける健康保険料率は都道府県ごとに定められております。令和2年度の平均保険料率は10%となりました(前年度同様)。
京都府及び兵庫県以外で料率が変更され、現行の率よりプラスとなるのが21支部、マイナスとなるのが24支部となっています。
都道府県ごとの保険料率は、地域の加入者の医療費に基づいて算出されています。疾病予防への積極的な取組みなどで都道府県の医療費が下がれば、その分都道府県の保険料率も下がりますから、今後、各地域において疾病予防などへの取組みが加速されるのではないでしょうか。
一方、協会けんぽにおける介護保険料率は全国一律で決められています。令和2年度の介護保険料率は前年度より上昇して1.79%となりました(前年度は1.73%)。
ちなみに、厚生年金保険料率は、平成29年9月以降18.3%で固定されています。
少子高齢化の進展とともに社会保険制度の持続可能性が不安視されています。
わたしたちの暮らしは、年金はもちろん健康保険や介護保険などがあることを前提に成り立っているわけですから、社会保険制度が将来にわたり健全に運営されるよう常に関心を持ちたいものですね。