モノの整理、心の整理と進めてきましたが、終活において今や避けて通れないのが「デジタル遺品」の整理です。
40代、50代の私たちは、まさにアナログからデジタルへの移行期を経験した世代。スマートフォン、パソコン、タブレットの中に、人生のあらゆる情報が詰まっています。
しかし、これらのデジタル資産は、物理的なモノと違って目に見えないため、「もしも」の時に家族がその存在すら知らず、困ってしまうケースが激増しています。
今回は、デジタル遺品とは何かを理解し、大切なデータを守り、家族に負担をかけないための具体的な整理術をお伝えします。
1. デジタル遺品とは?見落とされがちな3つの分類
デジタル遺品とは、故人が生前利用していたデジタル機器や、その機器に保存されていたデータ全般を指します。これらは大きく3つに分類できます。
① 金銭的価値のあるもの(デジタル資産)
現金や資産と同じように、相続時に価値や手続きが絡むものです。
- オンライン銀行、証券口座
- ネットオークション、フリマアプリの売上金
- ポイント、マイル、電子マネーの残高
- 仮想通貨(暗号資産)
② 契約や課金に関わるもの(デジタル負債・契約)
死後も自動で引き落としが続き、放置すると負債となる可能性があるものです。
- 有料のサブスクリプションサービス(Netflix、Amazonプライム、動画・音楽配信など)
- クラウドストレージの月額料金(iCloud、Google Driveなど)
- オンラインゲームの課金アカウント
- ドメイン、レンタルサーバーなどの事業用契約
③ 思い出や個人的な情報(デジタル想い出)
家族にとって価値のある、あるいは消去すべきプライベートなデータです。
- スマートフォン、PC内の写真・動画
- メール、LINE、SNSのやり取り
- ブログ、ウェブサイトのデータ
【危険!】 特に注意すべきなのが「デジタル負債」です。解約しない限り自動で引き落としが続き、家族が気づかないまま数カ月〜数年分の料金を払い続けることになりかねません。
2. 家族に負担をかけないための具体的な整理術
デジタル遺品対策で最も重要なのは、「アクセスできる状態にしておくこと」です。パスワードが分からなければ、家族は故人のデータに触れることすらできず、解約手続きも進められません。
① パスワードとアカウントの一覧表を作成する
これはエンディングノートに書き加えるべき最重要項目です。
- 最低限必要な情報:
- PC、スマートフォンのログインパスワード
- メインで使っているメールアドレスとそのパスワード
- オンライン銀行、証券口座のIDとパスワード
- 利用頻度の高いサブスクリプションサービスのアカウント情報
【ポイント】 パスワードを全て詳細に書き出すのはセキュリティ上不安が残ります。そのため、「パスワード管理ソフトのマスターパスワードだけを家族に伝える」「リストを金庫など厳重な場所に保管し、場所だけをエンディングノートに記す」などの工夫をしましょう。
② 「想い出」は整理して、共有できる状態に
大切な写真や動画は、家族が見やすいように整理しておきましょう。
- データ移行: クラウドに分散している写真を、外付けハードディスク(HDD)やUSBメモリなど、物理的なメディアにまとめておく。
- 共有フォルダの活用: 家族間でのみアクセスできる共有アルバムを作成し、日常的にデータをアップロードしておく。
③ 不要なアカウントは「生前整理」する
使っていない、あるいは家族に見られたくないアカウントは、今のうちに削除(退会)しておきましょう。特にSNSは、放置すると第三者にアカウントを乗っ取られたり、故人を騙る「なりすまし」に使われたりするリスクもあります。
④ サービスの「遺族対応」を確認しておく
近年、GoogleやAppleなどの大手IT企業は、「デジタル遺言」のような機能を提供しています。
- Google:「アカウント無効化管理ツール」
- Apple:「故人アカウント管理連絡先」
これらの設定をしておけば、もしもの時に、あなたが指定した人に、データへのアクセス権をスムーズに引き継ぐことができます。
まとめ:デジタル終活は「安心」を買う保険
デジタル遺品整理は面倒に感じるかもしれませんが、これは未来の家族の安心を買うための保険のようなものです。
あなたのデジタルライフの痕跡を「見える化」しておくことで、家族はあなたのプライベートを尊重しつつ、円滑に手続きを進めることができます。
まずは、スマートフォンのパスワードと、メインのメールアドレスの情報だけでも、エンディングノートに書き出すことから始めてみましょう。