葬儀やお別れの形を決めたところで、終活マネープランの実行段階に進みます。老後資金の不安を解消し、自分らしいセカンドライフを送るために欠かせないのが、「住まいの安心」を確保することです。
40代、50代の私たちにとって、「もし介護が必要になったら、どこで生活するか」という問いは、非常に現実味を帯びています。自宅での介護は難しくなりつつあり、将来的に施設を利用する可能性は高いと言えるでしょう。
しかし、介護施設と一口に言っても、公的施設から民間施設まで種類は膨大で、費用やサービス内容も全く異なります。知識がないまま焦って選ぶと、「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。
この記事では、主要な介護施設の種類と特徴を分かりやすく解説し、「後悔しない施設選び」のための具体的な見学ポイントをお伝えします。
1. 介護施設の「種類」を理解する:公的と民間の違い
日本の高齢者施設は、大きく分けて「公的施設」と「民間施設」があり、それぞれに目的と費用が異なります。
① 公的施設(費用が比較的安い)
| 施設名 | 目的と入居条件 | 費用相場(月額) | 特徴 |
| 特別養護老人ホーム(特養) | 要介護度3以上が原則。終の棲家(すみか)としての役割。 | 15万円~25万円 | 費用が最も安価。待機者が多いため、すぐに入居できない。 |
| 介護老人保健施設(老健) | リハビリが目的。在宅復帰が目標のため、入居期間は原則3~6ヶ月。 | 20万円~35万円 | 医療ケアやリハビリが充実。終身利用はできない。 |
② 民間施設(サービスが多様、費用は高め)
| 施設名 | 目的と入居条件 | 費用相場(月額) | 特徴 |
| 介護付き有料老人ホーム | 食事・入浴・排泄介助などの介護サービスが充実。終身利用可。 | 20万円~40万円 +初期費用 | 費用は高めだが、手厚い介護を受けられる。 |
| 住宅型有料老人ホーム | 自立~軽度な介護者が中心。外部の介護サービスを選んで利用。 | 15万円~30万円 +初期費用 | 自由度が高い。重度化すると退去を求められる場合がある。 |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 自立・軽度の高齢者向け。見守りサービスが付いた賃貸住宅。 | 15万円~30万円 +初期費用 | 施設というより賃貸に近い。介護が必要になったら外部サービスを利用。 |
【ポイント】
公的施設は費用が安い分、入居のハードルが高いです。現実的な選択肢として、民間施設の費用をマネープランに組み込んでおくことが重要です。特に「介護付き有料老人ホーム」は、介護が重度化しても住み続けられる安心感があります。
2. 後悔しない施設選びのための「見学ポイント」
施設選びは、情報収集だけでなく、「自分の目と肌で感じる」ことが最も大切です。後悔しないために、以下の5つのポイントをチェックリストとして活用してください。
① 「人」に関するチェック(最も重要!)
- スタッフの雰囲気: スタッフは笑顔で挨拶しているか?入居者に対し、優しく、且つ丁寧な言葉遣いをしているか?
- 入居者の表情: 入居者同士、またはスタッフと楽しそうに交流しているか?表情が暗い人が多くないか?
- 離職率や配置: 担当者に、スタッフの平均勤続年数や夜間の配置人数など、介護体制を具体的に尋ねる。
② 「費用」に関するチェック
- 費用の透明性: 初期費用(入居一時金)と月額費用の内訳が明確か?
- 追加費用の確認: 医療費、おむつ代、理美容代、レクリエーション費など、月額費用に含まれない費用を具体的に確認する。
- 償却方法: 入居一時金がある場合、もし早期に退去・死亡した場合の返還金(償却方法)について確認する。
③ 「生活」に関するチェック
- 居室の清潔感: 日当たりは良いか?車椅子でも動きやすい広さか?緊急コールはベッドやトイレの手元にあるか?
- 食事: 試食が可能であれば試食する。調理は施設内で行っているか(委託か)?刻み食やアレルギー対応が可能か?
- レクリエーション: 入居者が楽しめる多様なプログラムがあるか?外出機会は確保されているか?
④ 「医療・介護」に関するチェック
- 提携医療機関: 協力医療機関はどこか?緊急時の対応体制は?
- 看取り: 終末期まで施設で看取ってくれるか?(住宅型などは看取り不可の場合がある)
- 重度化対応: 介護度が重くなった場合でも、退去する必要がないか?
3. 施設選びの「準備」は今すぐ始める!
40代、50代の私たちが今できる最良の施設選びの準備は、「情報のストック」です。
- 資料請求とファイリング: 気になる施設のパンフレットを資料請求し、費用やサービス内容を比較しやすいようにファイルにまとめておきましょう。
- 見学リスト作成: 現役時代に、もしもの時に備えて「候補地」をいくつか決めておき、できれば夫婦で一度見学しておきましょう。
【重要】
施設の見学は、親の介護施設を選ぶ時にも役立ちます。親の終活と自分の終活を重ねて、「良い施設を見極める目」を養っておきましょう。
まとめ:施設の安心は「心の安心」に繋がる
介護施設選びは、「人生最後の住まい」を決める重大な決断です。
費用や立地だけでなく、「そこで働くスタッフの顔」や「入居者の笑顔」といった「心」の部分に目を向けることで、後悔のない安心できる場所を見つけることができます。
あなたらしいセカンドライフを最後まで全うするために、今日から「住まいの安心」という終活を始めてみませんか。
