2027年度に予定されている介護保険制度の改正に向けて、厚生労働省が本格的な議論を進めています。その中でも特に注目を集めているのが、「居宅介護支援」に対する自己負担の導入についてです。
現在は、他の介護サービスと異なり、ケアプランの作成には利用者の費用負担がありません。しかし、今後はこの仕組みにも変化が訪れるかもしれないのです。
本記事では、議論の背景と賛否両論、利用者への影響、そして私たち40代50代が今からできる備えについて、FP(ファイナンシャル・プランナー)の視点から解説します。
居宅介護支援とは?現在の仕組みを簡単におさらい
「居宅介護支援」とは、ケアマネジャーが利用者の状態や要望に応じて、最適な介護サービスを組み合わせてプランを作成する支援のことです。いわば、介護のコーディネーターのような存在です。
このサービス自体には利用料がかからず、全額が保険から給付されています(10割給付)。そのため、利用者は経済的負担を感じることなく、ケアマネの支援を受けることができるのです。
今回の議論の焦点:ケアプランの自己負担導入
今回の社会保障審議会では、「ケアプランの作成にも自己負担を導入するべきか?」という論点が提示されました。
例えば、訪問介護やデイサービスには利用者負担(1〜3割)がかかりますが、ケアプランにはそれがありません。以前から一部の専門家などからは「公平性に欠ける」との声も出ており、財政難を背景に、費用負担を求める声が強まっているのです。
この提案に対し、現場のケアマネジャーや関係団体からは強い反対の声が上がっています。
日本介護支援専門員協会の小林広美副会長は、「利用者負担の導入は慎重に検討すべき」と述べ、以下のような懸念を示しました。
- ケアマネが提供するサービスの中立性が損なわれる
- 介護サービスの利用控えにつながる
結果として、重度化リスクの増加や給付費の増大につながる可能性があると警鐘を鳴らしています。
財政面の課題:現役世代の負担増は限界
一方で、財政的な視点からは「現役世代の保険料負担が限界に近づいている」という切実な事情もあります。
健康保険組合連合会や経団連などからは、「持続可能な制度のためには、給付の見直しも必要」という意見も出ています。
このように、給付を受ける高齢者と支える現役世代とのバランスをどう取るかが大きな課題となっています。
自己負担導入を支持する立場からは、以下のようなメリットが挙げられています。
- サービス利用に一定の歯止めがかかり、過剰な給付が抑制される
- 利用者が「本当に必要な支援」かどうかを意識するようになる
- 財政の安定性が保たれる
しかし、これらの前提には「すべての利用者が自己判断できる」という理想があり、実際には判断能力が低下している高齢者も多く存在します。
今後の見通し:年末に迫る重要な判断
最終的な判断は年末にも出される予定です。
ケアマネジャーの処遇改善や業務負担軽減といった課題も含め、総合的な制度見直しが求められています。
私たちにできることは、制度改正の動向に関心を持ち、正しい情報をもとに備えることです。
40代50代の私たちができる備えとして、以下の3点が重要です。
- 家族で介護について話し合う機会を持つ
- 介護保険制度の基本を知っておく
- 自分のライフプランに介護費用を組み込む
介護は「突然始まる」ことが多く、準備していないと経済的・精神的に追い込まれることも。今から少しずつでも備えることで、将来の安心につながります。
まとめ:公平な介護と将来不安に備える視点
今回の議論は、単なる制度の見直しではなく、私たちの将来に直結する重要なテーマです。
自己負担導入の是非にかかわらず、「どのような介護を誰が支えるのか?」という本質的な問いが突きつけられています。
「介護=高齢者の問題」とせず、自分ごととして捉えること。
これからも制度の動きを注視しつつ、一人ひとりが備えていくことが、よりよい介護と安心した老後につながると考えています。