会社員とフリーランスでこんなに違う?社会保険の仕組み

近年、働き方の多様化が急速に進んでいます。正社員だけでなく、パートやアルバイトといった短時間労働者、さらにはフリーランスや副業など、働き方は実に多様です。

しかし、会社員とフリーランスでは加入する社会保険の制度が大きく異なり、老後の年金などの保障に差が生じます。

この記事では、日本の社会保険の仕組みを整理し、会社員とフリーランスの違いを解説します。

日本の社会保険制度の基本

日本の社会保険制度は、次の5つから成り立っています。

  • 年金保険
  • 医療保険
  • 介護保険
  • 雇用保険
  • 労災保険

これらはいずれも「強制加入」が原則で、一定の要件を満たせば必ず加入しなければなりません。運営は国や自治体等が担い、加入者は保険料を支払い、病気や老後などのリスクに備えます。

会社員に手厚い保障とフリーランスとの違い

日本の社会保険は、基本的に会社員に手厚い制度設計になっています。次の表にまとめると分かりやすいでしょう。

保険制度会社員フリーランス
年金保険〇(厚生年金+国民年金)〇(国民年金のみ)
医療保険〇(健康保険)〇(国民健康保険)
介護保険
雇用保険×
労災保険△(原則なし、特別加入あり)

大きな違いとして、会社員は老後に「老齢基礎年金+老齢厚生年金」が支給されるのに対し、フリーランスは老齢基礎年金のみです。厚生年金部分がないため、将来の年金額は会社員に比べて少なくなる傾向があります。

また、病気やケガで仕事を休んだ場合、会社員には「傷病手当金」が支給されますが、フリーランスにはありません。雇用保険の失業給付も同様で、フリーランスが仕事を失っても支給はありません。労災保険についても、会社員は業務中や通勤途中の事故で手厚い保障が受けられますが、フリーランスは原則対象外です。

フリーランスと労災保険の特別加入

従来、一部のフリーランスの方々(一部の業種・職種)については特別加入することができましたが、令和6年11月1日から、企業等から業務委託を受けているフリーランスの方(特定フリーランス事業)について業種・職種を問わず特別加入することができるようになりました。

労災保険に特別加入することにより、仕事中や通勤中のケガや病気、死亡に対して、補償を受けられるようになっています。

フリーランスが取れる自助的な備え

① 国民年金基金

フリーランスは厚生年金に加入できないため、将来の年金は「国民年金(老齢基礎年金)」のみとなり、給付額は会社員よりも少なくなります。その不足分を補う手段として有効なのが「国民年金基金」です。

国民年金基金は、自営業者やフリーランスが上乗せ年金をつくるための制度で、将来は「老齢基礎年金+国民年金基金」という形で受給できます。掛金は全額が所得控除の対象となるため、節税効果も大きいのが特徴です。

② iDeCo(個人型確定拠出年金)

もう一つ代表的な制度が「iDeCo」です。こちらは自分で掛金を拠出し、投資信託などで運用していく私的年金制度です。掛金が全額所得控除の対象となり、運用益も非課税となるため、この制度も税制メリットが非常に大きい仕組みです。

フリーランスの場合は月額68,000円まで拠出可能で、長期的な資産形成に役立ちます。老後資金を増やすために、国民年金基金と併用する方も増えています。

③ 小規模企業共済

中小企業の経営者や個人事業主向けに設けられた退職金制度にあたるのが「小規模企業共済」です。月1,000円~7万円の範囲で自由に掛金を設定でき、積み立てた掛金は全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象になります。

将来、事業をやめたり廃業したときに退職金のように受け取れる仕組みで、セーフティネットとして非常に有効です。

④ 民間の保険や共済制度

社会保険でカバーできない部分を補うには、民間の保険や共済制度の活用も選択肢になります。

  • 医療保険や所得補償保険で、病気やケガによる収入減に備える
  • 労働組合やフリーランス団体が提供する共済に加入して、死亡保障や医療保障を補強する

特にフリーランスは「傷病手当金」がないため、長期療養になったときの収入補填策は必須といえるでしょう。

まとめ:違いを理解して自分の将来を守る

働き方の自由度が増した一方で、社会保険の面から見れば「会社員」と「フリーランス」では大きな差が存在します。会社員は手厚い保障を受けられる一方、フリーランスは自己責任の側面が強く、老後資金や病気への備えを自ら計画する必要があります。

特にフリーランスの方は、国民年金基金やiDeCo(個人型確定拠出年金)、民間の保険商品などを活用して、自助努力で不足を補うことが重要です。また、労災保険の特別加入制度や業界団体の共済制度も有効な選択肢となります。

社会全体として「勤労者皆保険」の方向へ進んでいるものの、制度が完全に整うまでは時間がかかるでしょう。だからこそ、自分の立場に合った保障制度を理解し、早めに備えることが将来の安心につながります。


📌 この記事のポイント

  • 社会保険は5つ(年金・医療・介護・雇用・労災)から成り立つ
  • 会社員は厚生年金・傷病手当金・失業給付など手厚い保障あり
  • フリーランスは国民年金・国民健康保険が中心で保障は限定的
  • 勤労者皆保険に向けて、短時間労働者への適用範囲が拡大中
  • フリーランスも特別加入制度や自助努力で備えることが必要