介護保険はこれからどうなる?40代50代が知っておくべき予算の最新動向

介護保険制度が始まって20年以上。当初は「まだまだ先の話」と思っていた方も、気づけば親の介護が現実になったり、自分自身の老後を意識し始める年代に入ってきたのではないでしょうか。

今回は、厚生労働省が来年度の予算として発表した介護保険の給付費と今後の制度改正の動きについてお伝えします。

40代50代の私たちにとって、「今後、何がどう変わるのか?」

そして「今から何をしておけばいいのか?」を一緒に考えていきましょう。

介護費用、来年度は14兆円超へ

厚労省が2026年度予算として提出した概算要求によると、介護保険の給付費は13兆2659億円、自己負担などを含めた総費用は14兆3229億円と見込まれています。

この額は過去最高で、すでに社会保障費の中でも大きなウェイトを占めています。ちなみに、2023年度の実績でも給付費は10兆8263億円となり、前年度より3,163億円(3.0%)増加。こちらも過去最高を更新しています。

高齢化が進み、特に75歳以上の人口が急増していることが、費用増の主な要因です。

介護保険の財源、誰がどれだけ負担している?

介護保険の仕組みは、「みんなで支える仕組み」として設計されています。

財源の内訳は以下の通りです:

  • 40歳以上の保険料:50%
  • 公費(税金):50%
    • 国:25%
    • 都道府県:12.5%
    • 市町村:12.5%

つまり、私たち40歳以上の世代は、保険料という形でしっかり負担している立場です。それに加えて、税金としても間接的に支えている構図です。

これだけ見ても、すでに私たちは介護保険制度の大きな担い手であることがわかります。

なぜ費用が膨らみ続けるのか?

厚労省が公表した数字では、2023年度の介護保険給付費は前年度比で3,000億円以上の増加。年々右肩上がりで増え続けています。

その最大の理由は「高齢者人口の増加」。特に後期高齢者(75歳以上)の人口が増えており、介護ニーズが高まっています。

さらに要介護者の増加により、介護サービスの利用件数や提供時間も増加。これにより、制度そのものが持続可能かどうかが問われ始めているのです。

2027年の制度改正に向けた議論が始まる

厚労省は今年の秋から、2027年度に予定されている介護保険制度改正に向けた本格的な議論をスタートさせます。

その中で、議論される可能性が高い論点がこちらです

  • 高齢者の自己負担割合の引き上げ
  • ケアプランの有料化(現在は無料)
  • 軽度者(要支援など)への訪問・通所介護の縮小、または市町村事業への移管

これらはすべて「負担の見直し」や「サービスの整理」が背景にあります。

つまり、私たちにとっては「将来使えるサービスの範囲が狭まるかもしれない」という話であり、
「負担が今より増えるかもしれない」ということでもあります。

給付費の抑制にはリスクもある

もちろん、膨らみ続ける介護費用をどこかで抑えなければ、制度は立ち行かなくなります。しかし、無理に抑えれば、別の問題が起こります。

たとえば、サービスを受けにくくなったことで「介護離職」が増えたり、十分な支援が受けられないことで「老老介護」や「孤独死」が増えるなど、社会全体にとってマイナスの影響が出てきます。

また、介護現場の人手不足も深刻です。人材確保のためには、介護職の処遇改善(賃上げ)も不可欠ですが、それも財源が必要です。

つまり、支出を減らす一方で、必要な投資もしていかなければならないというジレンマがあるのです。

私たち40代50代が今できること

制度の動向を知ることはもちろんですが、私たちができることは他にもあります。

たとえば、

  • 両親の介護が近づいてきたときの情報収集(地域のサービスや費用の目安)
  • 自分自身の老後資金の計画(介護型保険や民間サービスも含めて)
  • 家族との話し合い(将来の希望や意向、財産のことなど)

特に「ケアプラン有料化」や「軽度者サービスの縮小」などが実現すると、サービスを受ける際の“入り口”から費用がかかる時代になります。

今のうちから備えておくことで、いざというときに慌てずにすみます。

「介護=親の話」ではなく「自分ごと」へ

これまで介護は「親の世代が受けるもの」というイメージが強かったかもしれません。しかし、制度の改正が進むことで、自分たちが利用する頃には今とはまったく違う仕組みになっている可能性もあります。

「自分が要介護になったとき、何がどこまで保障されているのか」

この視点で備えることが、これからの時代には求められます。

制度の変化に「振り回されない備え」を

介護保険制度は、今後も見直しが続く分野です。制度に“振り回される”のではなく、早めに情報をキャッチして“備える”姿勢が、将来の安心につながります。

これから親の介護に向き合う方も、将来の自分の姿を重ね始めている方も、ぜひ一度、制度の見直しをきっかけに、家族で話し合い、備えを始めてみてください。