「終活」と聞くと、70代や80代になってから行うもの、あるいは亡くなる直前の準備という印象を持つ方が多いでしょう。
しかし、実際には40代や50代こそ、終活を始めるのに最適な時期です。
理由は大きく3つあります。
- 老後期間の長期化
令和5年簡易生命表によると、日本人の平均寿命は男性81.09歳、女性87.14歳。さらに、人生100年時代が現実化しつつあります。定年後の生活期間は20〜30年に及びます。 - 親の介護と自分の老後が重なるリスク
内閣府の「高齢社会白書」では、介護が必要になる年齢は平均75歳前後。40・50代は親の介護が本格化する世代であり、同時に自分の老後準備も迫られる「ダブル負担」期にあたります。 - 心身の余裕があるうちに準備できる
健康で働けるうちは判断力・行動力もあり、計画的な準備が可能です。
終活は「死の準備」ではなく、「これからをより良く生きるための活動」です。今回は、ミドル世代からの終活を「お金」「健康」「心」という3つの柱で整理していきます。
終活の第1の柱:お金の整理
老後資金の現状把握
まずは、自分の老後資金の見込みを確認することから始めましょう。「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で受給見込み額を把握すると、想像より少ないことに驚く人も少なくありません。
例えば、生命保険文化センターが行った調査によると、夫婦2人での老後の生活費(ゆとりある暮らし)は月約37.9万円とされています。一方、標準的な夫婦世帯の年金受給額は月約23万円。差額は月15万円、年間180万円、20年間で3,600万円にもなります。
このギャップを埋めるには、今からの貯蓄や投資が不可欠です。
資産形成と運用のポイント
40・50代は運用期間がまだ残されています。ただし、リスクの取りすぎは禁物。iDeCoやNISAなどの制度を活用して、インデックス型投資信託などの長期・分散・積立商品を基本にします。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2023年)」では、50代の金融資産保有額中央値は745万円(金融資産保有世帯)。老後資金の目標額(夫婦で2,000〜3,000万円)にはまだ差があります。計画的な積み増しが必要です。
相続・遺言の準備
資産整理は、自分のためだけでなく家族のためでもあります。法務省によれば、相続をめぐる家族間トラブルの約3割は遺産1,000万円以下の家庭で発生しています。金額の大小に関わらず、準備は必要です。
エンディングノートで希望を書き残すだけでも効果がありますが、法的効力を持たせるなら公正証書遺言を作成しましょう。
終活の第2の柱:健康の整理
健康寿命を延ばす生活習慣
厚生労働省によると、2022(令和4)年の健康寿命は男性72.57歳、女性75.45歳。平均寿命とはそれぞれ約9年、約12年の差があります。この差が「要介護の期間」です。
健康寿命を延ばすためには、
- 週150分以上の有酸素運動(例:1日30分×週5日)
- 筋トレ週2回以上
- 栄養バランスを意識した食事
が推奨されています。
病気や介護の備え
介護保険制度は40歳から加入が義務付けられていますが、申請や利用方法は意外と知られていません。2023(令和5)年度末の要介護(要支援)認定者数は約708万人。将来に備えて、利用できるサービスや費用の目安(介護施設入居は月15〜25万円程度)を把握しておきましょう。
また、「延命治療を望むか」「臓器提供をするか」などを事前に家族へ伝えるACP(アドバンス・ケア・プランニング)の取り組みも広がっています。
4. 終活の第3の柱:心の整理
人間関係の棚卸し
NHKの調査によると、65歳以上の約4割が「日常的に会話をする人がほとんどいない」と回答しています。孤立を防ぐためにも、友人や親族とのつながりを保ち、地域や趣味のコミュニティに参加することが大切です。
また、感謝を伝える、わだかまりを解消するなど、人間関係の整理も終活の一環です。
自分らしい最期のイメージ
葬儀形態は多様化しており、家族葬や直葬(火葬のみ)を選ぶ人が増えています。全国の平均葬儀費用は約120万円ですが、直葬なら20〜40万円で済むケースもあります。
お墓も永代供養墓や樹木葬、散骨など選択肢が広がっています。自分の希望を明確にしておくことで、家族の負担が大幅に減ります。
5. 今すぐ始められる終活アクションプラン
- 1週間でできること:財布や書類の整理、重要書類の場所を家族に共有
- 半年でできること:資産一覧表の作成、健康診断受診、エンディングノート記入
- 1年でできること:ローン・保険の見直し、遺言書の準備、人間関係の再構築
6. まとめ——終活は「これからを生きるための活動」
40・50代からの終活は、人生の後半を安心して、そして自分らしく過ごすための準備です。「お金」「健康」「心」の3つを整えることで、不安は減り、残りの時間をより豊かにできます。
今こそ、「まだ早い」ではなく「今から始める」に変える時期。
終活は人生を終える準備ではなく、これからの人生をより良くするための投資なのです。