「相続」と聞くと、まだ自分には関係ないと思う方も多いかもしれません。しかし、40代・50代という世代は、親の高齢化や自身の将来を見据えるうえで、相続について本気で考え始めるタイミングです。
相続は、誰にでも必ず訪れる“家族の節目”です。
準備を怠ると、家族間のトラブルや思わぬ税金負担に発展することもあります。本記事では、40代・50代の方向けに「今からできる相続対策」や「基本的な知識」について、わかりやすく解説します。
相続とは?基本を押さえる
相続とは、人が亡くなったときに、その人の財産や権利・義務を相続人が引き継ぐことを指します。相続の対象となる財産は、預貯金、不動産、有価証券、車、骨董品などのプラスの資産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの資産も含まれます。
相続には、「法定相続」と「遺言による相続」の2つのパターンがあります。
- 法定相続:法律で定められた割合で財産を分ける
- 遺言相続:被相続人(亡くなった人)が遺言書で指定した内容に従って分ける
どちらも法律に基づいて手続きが進められますが、遺言書がある場合には原則としてそちらが優先されます。
40代・50代が直面しやすい相続の場面
この年代で相続を意識する場面は、主に以下の2つです。
(1)親の相続への備え
親が高齢になるにつれて、介護や医療の問題と並行して「もしものとき」の相続も現実味を帯びてきます。
- 実家をどうするのか?
- 親の財産や借金の状況は把握しているか?
- 兄弟姉妹との関係は良好か?
- 親に遺言書を書いてもらっているか?
こうした問題を放置しておくと、いざ相続が発生したときに話し合いがこじれたり、感情的な対立に発展する恐れがあります。
(2)自分自身の相続の準備
40代・50代は、資産を形成し始めている人も多く、自分の死後のことを考えるタイミングでもあります。
- 自分に何かあったとき、配偶者や子どもに迷惑がかからないようにしたい
- 相続税がかかる可能性があれば、対策しておきたい
- 遺言書を準備しておきたい
“自分はまだ若い”と思っていても、突然の病気や事故がないとは限りません。万が一に備えて、自分の相続についても少しずつ考え始めることが大切です。
よくある相続トラブルとその回避法
相続で多いトラブルには、次のようなものがあります。
トラブル① 遺産分割をめぐる家族間の対立
たとえば「兄が親の面倒を見ていたから多くもらうべき」「妹が実家に住み続けたいから不動産は譲れない」など、感情や生活状況が絡むと話し合いが難航します。
回避法:
- 親の生前に話し合いの場を設ける
- 遺言書を作成してもらう
- 公正証書遺言にすることで法的な効力を明確にする
トラブル② 相続税の負担が大きすぎる
資産が一定額を超えると、相続税の申告・納税義務が生じます。特に、評価額の高い不動産を相続するケースでは、現金が足りず納税できないという事態も。
回避法:
- 生前贈与を活用して資産を少しずつ移転する
- 生命保険を活用して納税資金を確保する
- 相続税シミュレーションをして対策を練る
相続に関する3つの準備ポイント
40代・50代が「今すぐできる」相続対策として、以下の3つを意識しておきましょう。
(1)親の財産・負債の現状把握
親の通帳や証券、不動産の登記簿、借金があるかどうかなどをリスト化しておくことで、いざというとき慌てずに済みます。親が元気なうちに、さりげなく話を聞き出したいものです。
(2)遺言書の作成を促す
口約束では意味がありません。相続人が複数いる場合、明文化された遺言書があることで、大きなトラブルの防止になります。公正証書遺言であれば、家庭裁判所の検認が不要なのでスムーズです。
(3)自分の相続についても考え始める
家族が困らないようにエンディングノートを用意したり、自分の資産整理を始めるのも40代・50代からで遅くありません。
専門家に相談するメリット
相続は法律・税金・不動産など多くの分野が関わります。自力で解決しようとすると時間も労力もかかり、誤った対応をしてしまう恐れもあります。
司法書士(不動産登記、遺言書作成支援)や税理士(相続税の試算や申告)、弁護士(遺産分割やトラブル対応)など、状況に応じて専門家を活用し、家族にとって最適な準備を進めることが大切です。
相続は「自分ごと」として向き合う時代
40代・50代は、親の相続と自分の相続の両方に関心を持つ必要がある、いわば“ダブル相続世代”ともいえます。
「うちは財産なんて少ないから大丈夫」と思っていても、不動産があれば話は別。不動産の評価額は想像以上に高く、納税や分割の問題が生じやすいのです。
相続は、事前に準備しておくことで家族の負担を大きく減らすことができます。
備えあれば憂いなし。
自分と家族の未来のために、少しずつ相続について考え、行動していきましょう。