NISA改正で子どもの資産形成も可能に?40代・50代が今考えるべきこと

2024年に生まれ変わった新NISA制度は、「投資をもっと身近に」という目的のもと、多くの人にとって使いやすく進化しました。そんなNISAが、2026年度にさらに改正される可能性が出てきました。

金融庁が8月29日に発表した税制改正要望では、つみたて投資枠を未成年にも使えるようにすることや、低リスク商品の対象拡大、スイッチング(商品の入れ替え)の柔軟化などが盛り込まれています。

今回は、この「次のNISA改正」が私たちの家計や資産形成にどう関わるのか、特に40代・50代の方に向けて詳しく解説していきます。

令和8(2026)年度 税制改正要望について

NISAに関する有識者会議 中間とりまとめ

子ども名義でもNISAが使える時代へ?

現行のNISA制度では、口座開設は18歳以上に限られています。しかし、金融庁はこの年齢制限を見直し、「つみたて枠に限って未成年でも利用できるようにしよう」と提案しました。これは、こども家庭庁とも連携しての要望となっています。

つまり、実現すれば「子どもの名義で、つみたて投資を始められる」ようになる可能性があるということ。将来の教育資金や自立資金などを“投資で育てる”選択肢が広がります。

かつては「ジュニアNISA」が同様の役割を担っていましたが、使い勝手の悪さや制限の多さから2023年末で終了。今回の改正案は、ジュニアNISAに代わる新たな制度として、大きな注目を集めています。

投資初心者にも嬉しい「低リスク商品」の追加

今回の税制改正要望では、NISAの対象商品についても見直しが入っています。特につみたて枠では、「債券を中心とした低リスクの投資信託」などを新たに対象に加えることが検討されています。

これにより、これまで株式系ファンドに抵抗があった人や、値動きの少ない商品を選びたい高齢者世代にも、NISAのハードルが下がることになります。

特に40代・50代の方は、「大きく増やす」というより「リスクを抑えて着実に育てる」ことを重視したい時期。商品ラインナップの多様化は、そういったニーズに応える形です。

スイッチングがしやすくなる?注目の仕組み変更

さらに、投資経験者にとって注目すべきポイントが「スイッチング」の見直しです。現在は、一度非課税枠で買った商品を売却しても、そのぶんの枠は翌年まで戻りません。

これが改正されると、売却しても年間投資枠(360万円)の範囲内であれば「すぐに再投資できる」ようになります。

つまり、「一度買ったら放置」ではなく、「情勢に合わせて商品を入れ替える」といった戦略的な運用がしやすくなるということ。市場の変化に柔軟に対応したい人にとって、これは非常に大きな前進です。

子どもや孫に「投資で贈る」時代に?

仮に未成年へのつみたて投資が解禁された場合、親や祖父母が子ども名義で資金を投じるケースが増えるでしょう。これは、実質的な「資産の早期移転」や「金融教育」としても有効な方法になります。

例えば、毎月1万円を15年間つみたてて年利3%で運用できれば、約230万円ほどに育ちます。「お年玉」や「入学祝い」の代わりに投資資金を贈る──そんな考え方も、これからの時代のスタンダードになるかもしれません。

ただし、贈与税や名義預金の問題には注意が必要です。親が自由に引き出せる状態であれば「名義貸し」と見なされるリスクも。このあたりの判断には、専門家の助言が欠かせません。

制度に振り回されず、「目的ありき」で使う

ここで大切なのは、「制度が変わるから動く」のではなく、「目的に応じて制度を使う」視点です。

NISAはあくまで資産形成の“手段”であり、投資の“目的”ではありません。

たとえば、

  • 教育費を貯めたい
  • 老後資金の一部を非課税で積み立てたい
  • 配当や売却益を生活費の足しにしたい

といった具体的な目的を明確にしたうえで、制度を活用することが何より重要です。

制度のメリットばかりを追いかけてしまうと、「売却できない」「選び方がわからない」「やっぱり損してる…」と後悔につながるケースも珍しくありません。

改正はまだ「要望段階」…でも、動き出す準備はできる

今回の金融庁の発表は「要望」にすぎません。これから年末にかけて与党の税制調査会での議論を経て、正式な制度設計が固まっていきます。

とはいえ、方向性として「世代を超えて投資を広げていく」姿勢が明確になったことは、大きな意味を持ちます。

今のうちから、

  • ご自身の投資目的を見直す
  • 子ども・孫の資産形成をどう考えるか整理する
  • 家計全体でどの程度リスクが取れるかを把握する

といった“内側の準備”を進めておくことが大切です。

FPとしての提案:「世代全体の家計設計」を見直すタイミング

FPの仕事は、「制度を教えること」ではなく、「その制度をどう活かすかを一緒に考えること」です。

今回のNISA改正案は、「あなた個人」ではなく「家族全体の家計戦略」を考えるうえでのチャンスだと思います。

・子どもの未来のために何ができるか?
・老後と教育、どちらを優先すべきか?
・一括よりも毎月のつみたてが合っているか?

こうした問いに対する答えは、人それぞれ異なります。

制度は変わり続けますが、あなたのライフプランは、あなたにしか立てられません。「変わる制度」を知り、「変わらない想い」を軸にして、これからの資産形成を考えていきましょう。