ケアマネジメントの利用者負担導入に関する議論の現状と今後の方向性

第129回社会保障審議会介護保険部会の資料が公表されました。

第129回社会保障審議会介護保険部会の資料

本資料では、介護保険制度の持続可能性とサービスの質の確保という観点から、現在全額公費(保険給付)で賄われているケアマネジメント費用について、利用者負担を導入すべきか否かが議論されています。

1. 議論の背景と現状

現在、ケアマネジャーによるケアプラン作成等の費用は、利用者の自己負担がなく、全額(10割)が介護保険から給付されています。これは制度創設時、ケアマネジメントという新しい仕組みの普及を最優先したためです。

しかし、制度創設から25年が経過し、ケアマネジメントが定着した一方で、介護費用は増大の一途。そのため、制度全体の持続可能性を確保する観点から、他の介護サービスと同様に利用者負担(1割〜3割)を導入すべき時期に来ているのではないか、という点が議論されています。

2. 利用者負担導入を巡る対立軸

この論点については、財政の持続可能性と利用者の適切な受療権の間で意見が分かれています。

【慎重論:セーフティネット機能の維持】
慎重な立場からは、有料化による利用控えが懸念されています。コストを避けるためにケアマネジメントを利用せず、結果として状態が悪化(重度化)すれば、長期的には給付費の増大を招くリスクがあります。また、ケアマネジメントはサービスへの入り口であり、公正・中立な立場から自立支援を行う役割があるため、単なるサービス利用とは性質が異なるとの指摘もあります。

【積極論:公平性と質の向上】
一方、積極的な立場からは、他のサービス(訪問介護やデイサービス等)は利用者負担があるため、公平性の観点からケアマネジメントも負担を求めるべきだとする意見が挙がっています。また、対価を支払うことで利用者がサービス内容により関心を持ち、結果としてケアマネジメントの質が向上する効果や、将来的な人材確保のための財源確保も期待されるとしています。全面導入が困難な場合でも、定額負担などの段階的な導入を検討すべきとの声もあります。

3. 特定課題への対応と生産性向上

特定の環境や業務効率化に関しては具体的な方向性が検討されています。

まず、住宅型有料老人ホーム等における対応です。施設と同一法人のケアマネジャーによる「囲い込み(過剰なサービス付与等)」が問題視されており、適正化の観点から、こうした特定の居住環境においては利用者負担の導入が検討されています。

次に、ケアマネジャーの業務負担軽減です。 ケアマネジャーが本来の専門業務(相談・調整)に集中できるよう、請求事務などの定型業務についてはICT(ケアプランデータ連携システム等)による効率化が必須とされています。また、ICT化が浸透するまでの過渡的な措置として、事務代行的な業務にかかる実費相当分を利用者に負担してもらう案や、本来業務ではない「シャドウワーク(ゴミ出し等の生活支援)」の整理も課題とされました。

まとめ

本議論は単なる有料化の是非にとどまらず、限りある財源の中でいかに効率的かつ公平な制度を維持するかという構造的な問題です。利用控えによるリスクを最小限に抑えつつ、受益者負担の適正化をどう図るか、2027年度に向けて現実的な着地点が模索されているといえるでしょう。