働きながら介護をする「ビジネスケアラー」の心構え

仕事とキャリアの円熟期にあるミドル世代にとって、親の介護と業務を両立させる「ビジネスケアラー」としての生活は、いつ始まってもおかしくない現実です。大切なのは、介護を自分だけで完結させる個人の問題ではなく、マネジメント能力を駆使して解決するプロジェクトとして捉え直すことです。

ビジネスケアラーとして心身の健康とキャリアを維持するために、最も重要となる3つの心構えについてお伝えします。

介護のプロをマネジメントする視点を持つ

ビジネスケアラーが陥りやすい最大の罠は、仕事で培った責任感の強さから、排泄や入浴といった身体的介助まで自ら担おうとすることです。しかし、プロではない家族がこれらを行うのは、肉体的な消耗が激しいだけでなく、親との関係性を悪化させる原因にもなります。

ビジネスケアラーの真の役割は、自ら手を動かすプレイヤーではなく、ケアマネジャーやヘルパーといった専門家チームを動かすマネージャーであると自覚することです。各サービスの進捗を把握し、親の状態に合わせてプランを最適化していく。このマネジメントに徹することで、仕事に必要なエネルギーを温存しつつ、親にも質の高いケアを提供することが可能になります。

職場への開示を戦略的に行う

介護が始まると、突発的な早退や欠勤が発生しやすくなります。このとき、周囲に事情を伏せたまま対応しようとすると、無責任な人という誤解を招き、あなた自身の精神的なストレスも増大します。

介護の状況は、上司やチームに対して戦略的に開示しましょう。隠すのではなく、現在、親の介護体制を構築中である、週に一度は通院の付き添いが必要になる可能性があるといった情報を具体的に共有しておくのです。状況をオープンにすることで周囲のサポートを得やすくなるだけでなく、会社側も介護休業や短時間勤務といった制度の適用をスムーズに検討できるようになります。職場はあなたの敵ではなく、介護を乗り切るための強力なインフラなのです。

完璧主義を捨て、持続可能性を最優先する

仕事も介護も完璧にこなそうとすることは、早晩、心身の破綻を招きます。ビジネスケアラーに求められるのは、100点満点の介護を目指すことではなく、仕事を辞めずに、60点から70点の状態を長く続けるという持続可能性の追求です。

疲れているときは迷わずショートステイや追加のサービスを利用し、自分自身が休息する時間を確保してください。あなたが倒れてしまえば、介護だけでなく、これまでのキャリアも同時に失われてしまいます。自分が元気でい続けることが、親にとっても最大の安心に繋がるという事実を、何よりも優先すべき判断基準に据えてください。

ビジネスケアラーは新しい時代の生き方である

ビジネスケアラーとして生きることは、決して人生の停滞ではありません。介護を通じて得られる多様な価値観や、限られた時間で成果を出す効率的な働き方は、これからのビジネスパーソンに求められる深みや強さへと繋がります。

まずは職場の就業規則などを確認し、会社が提供しているサポート体制を再確認することから始めてみましょう。あなたが制度を賢く使い、周囲を巻き込む姿勢を見せることは、同じ悩みを抱える同僚たちにとっても希望の道標となるはずです。