厚生労働省は昨年12月、労働政策審議会の部会において、同一労働同一賃金の施行5年後見直しに向けた報告書案を提示しました。
この資料には、短時間労働者、有期雇用労働者、および派遣労働者と正社員との間にある不合理な待遇格差を解消するため、基本給や賞与、各種手当の具体的な考え方が示されています。特に、退職手当や家族手当、病気休職などの項目が新たに追加・更新され、裁判例を踏まえたより詳細な指針となっています。
また、待遇の改善にあたって正社員の条件を不利益に変更することは望ましくないという原則も強調されました。全体として、雇用形態に関わらず納得感のある公正な評価と待遇を確立するための基準を提示しています。
雇用形態又は就業形態にかかわらない公正な待遇の確保に向けた取組の強化について(報告)(案)
2020年に本格施行された「同一労働同一賃金」。
正社員と非正規社員との不合理な待遇差をなくすために導入されたこの制度が5年目を迎え、厚生労働省がガイドライン見直しに向けた動きを始めました。背景にあるのは、制度施行後に相次いだ裁判と最高裁判決。そこで示された判断基準をもとに、今のガイドラインでは対応しきれない点を整理し直そうというのが今回の趣旨です。
見直し案では、これまでガイドラインに記載がなかった「退職金」「住宅手当」「家族手当」「無事故手当」などが新たに追加される方針です。これらは多くの企業で“正社員向けの福利厚生”とされてきましたが、今後はその取扱いを明確に説明できる必要があります。
「住宅手当は福利厚生だから、非正規には出さなくていい」
「退職金は長期雇用前提の制度だから対象外でいい」
そう思っていませんか?
実際の判例では、「手当の趣旨・目的に合理的な理由があるかどうか」が問われます。制度設計の意図をきちんと説明できなければ、不合理と判断される可能性があります。今回の見直し案には、夏季・冬季の特別休暇についても言及されています。正社員だけが特別休暇を取得できるルールになっていないか、契約社員・パート社員にも説明がされているかを確認しておきましょう。
「労使協定方式」と「派遣先均等・均衡方式」の2つの選択肢がある派遣社員の待遇決定方法。今回の報告書では、運用の実態や改善の必要性についても議論されています。派遣先として人材を受け入れている企業も、他人事ではありません。
報告書では、非正規社員側の意見を制度設計に反映させることの重要性も強調されています。これはすなわち「労使の対話を促進し、説明責任を果たす企業が評価される」方向へと制度が進むことを意味します。
ガイドライン改定後は、これらの基準を前提に社内制度を点検していく必要があります。今回の見直しはまだ“案”ですが、方向性は明確です。すでに裁判所では判断が出ており、後追いで制度が整えられている段階といえます。
「まだ施行されていないから大丈夫」ではなく、このタイミングこそ、社内制度の点検を進めるチャンスです。
