2025年9月12日、日本政府が「人工知能戦略本部」の第1回会合を開催しました。これは、日本がAIの利活用と開発を国家レベルで推進するための司令塔となる新組織です。
今回の会議では、「世界で最もAIを開発・活用しやすい国」を目指すための基本計画の骨子が議論されました。
政府が示した施策の柱は次の4つです。
- AIを使う
- AIを創る
- AIの信頼性を高める
- AIと協働する
この4本柱を中心に、年内に基本計画を策定し、閣議決定される予定です。ここから、日本のAI戦略が本格的に動き出します。
「AIを使う」:利用しやすい社会インフラの整備
まず注目すべきは、「AIを使う」ための制度や環境整備です。行政、教育、医療、製造業など、あらゆる分野でAIを活用しやすくするためのガイドラインや支援策が検討されます。
例えば、学校教育へのAI導入による個別最適化学習、自治体業務の自動化による行政コスト削減、製造業における生産性の向上など、幅広い応用が期待されています
「AIを創る」:日本発のAI技術を生み出す土壌づくり
次に、「AIを創る」という視点。これは、生成AIを含む国産のAI技術の研究開発と、それを担う人材育成の促進です。
生成AIの領域では、ChatGPTをはじめとした米国発の技術が席巻していますが、日本独自の価値観や産業構造に適したAIの開発は、今後ますます重要になります。
大学や企業による共同研究、スタートアップ支援、官民連携でのR&D投資強化など、エコシステムの構築が期待されます。
「AIの信頼性を高める」:法整備と倫理の確立
AIが社会に深く浸透する中で、「信用できるAI」をどうつくるかも課題です。政府は、AIの透明性・説明責任・データプライバシー・アルゴリズムの公平性といった観点から、法制度や倫理指針の整備を進めるとしています。
欧州のAI規制(EU AI Act)を参考にしつつ、日本らしいバランスのとれた規制設計が求められます。過度な規制によってイノベーションを阻害しないような仕組みづくりがカギになります。
「AIと協働する」:人とAIが共に働く社会をどうつくるか
生成AIの登場によって、これまでホワイトカラー業務が「自動化されにくい」とされていた神話が崩れました。
文章作成、要約、分析、プレゼン資料の自動生成など、AIがこなせる業務は確実に増えています。
こうした中で、「AIに仕事を奪われる」のではなく、「AIとどう共存するか」が重要なテーマとなります。首相も、「AIは雇用や産業の在り方を変える」とし、新たな社会構造や教育・雇用制度の設計が必要だと述べました。
なぜ今、基本計画の策定が急がれるのか
生成AIは2023年以降、急速に社会実装が進んでいます。政策が現場のスピードに追いついていない現状を踏まえ、政府は迅速な対応を求められています。
年内に閣議決定を目指す今回の基本計画は、単なるスローガンではなく、規制・育成・実装支援を一体的に進める「実行戦略」として位置づけられています。
企業活動への影響も大きく、AI活用をどう進めるかは今後の競争力を左右します。
最後に:これからのAI社会を共に考えるために
今回の政府方針は「国としてのAI利活用の方向性」が明確になった点で、大きな意味を持つと感じています。
特に、「創る」「信頼性を高める」領域では、日本の強みを活かすチャンスも多く、中小企業や地方自治体でも、環境が整えば一気に変革が進む可能性があります。
「難しそう」「うちは関係ない」と思っている方こそ、今が情報を集め始めるタイミングです。
【参考リンク】
内閣府|人工知能戦略本部 第1回会合
https://www8.cao.go.jp/cstp/ai/ai_hq/1kai/1kai.html