2025年10月から、75歳以上の後期高齢者の医療費制度に関する大きな変更が予定されています。
今回の変更は「外来医療費の自己負担上限額の引き上げ」に関するもので、多くのシニア世代に影響を与えると見込まれています。
ニュースでは「約310万人が影響を受ける」と報じられ、年平均で約9000円、中央値で約6500円の負担増になるとのこと。
年金生活の中で数千円の出費増は軽くありません。
今回は、この制度変更の内容と、その影響・対策をわかりやすく解説していきます。
どんな変更?75歳以上の外来医療費の負担上限が引き上げに
今回の制度改正のポイントは以下の通りです。
- 対象者:75歳以上の一部の方(後述)
- 変更点:外来医療費の月額負担上限が引き上げられる
- 施行時期:2025年10月から
現在、医療費の2割負担対象の方には、「外来負担の急増を防ぐ」ために月額上限3000円という制限がついています。これが10月から引き上げられる予定で、これまでよりも外来受診のたびに自己負担額が増えることになります。
具体的にいくら増える?平均9000円、中央値6500円の負担増
厚生労働省の発表によれば、今回の改定によって影響を受ける人数は約310万人。具体的な金額の目安として、
- 年間の平均負担増は約9000円
- 年間の中央値は約6500円
と見込まれています。
つまり、月に換算すると500円〜800円程度の負担増が予想されます。受診頻度が高い方にとっては、より大きな影響となる可能性があります。
対象になる人は?2割負担の基準とは
すべての75歳以上の方が影響を受けるわけではありません。今回の見直しが適用されるのは、医療費2割負担の対象者です。
2割負担は住民税の課税所得が28万円以上で、世帯内の75歳以上全員の「年金収入とその他の所得」が合計320万円以上、単身世帯なら200万円以上の場合に対象となります。
つまり、ある程度の年金収入やその他所得がある方が対象です。年金以外の収入がある方や、資産運用をされている方はご注意ください。
なぜ変更されるのか?背景にある国の財政と現役世代の支援
この制度変更の背景には、国の医療財政のひっ迫があります。
現在、後期高齢者医療制度は、
- 国と地方自治体からの公費
- 加入者からの保険料
- 現役世代からの支援金
によって成り立っています。
とくに少子高齢化が進む中で、現役世代の負担が年々増加しています。
厚労省は今回の改定によって、年間約600億円の財政圧縮が可能になると見込んでいます。厚労大臣は「現役世代の負担を抑制する観点から理解してほしい」と述べています。
今のままで大丈夫?家計への影響をチェック
年金生活において、年間9000円の出費増は無視できる金額ではありません。たとえば、慢性的な持病で定期通院が必要な方や、複数の診療科を受診している方は、月額医療費の上限引き上げが家計にじわじわと響いてくるでしょう。
「何となく支出が増えた気がする…」という感覚は、実は制度変更による影響かもしれません。
対策1:医療費控除や高額療養費制度の活用を見直す
まず考えたいのが、医療費控除の活用です。
年間10万円以上の医療費がかかった場合、確定申告で一部が還付される可能性があります。通院にかかる交通費も対象になる場合がありますので、レシートや領収書をしっかり保管しておきましょう。
また、高額療養費制度もチェックしておくと安心です。万が一、医療費が急増しても、上限を超えた分が戻ってくる仕組みです。
対策2:今後の医療費を見越した家計の見直し
医療費は「将来の生活費」のなかでも、特に不確実性が高い項目です。今回のような制度変更があるたびに影響を受けることを考えると、「将来の医療費を見越した資金計画」は欠かせません。
- 定期的な生活費の見直し
- 不要な出費の削減
- 医療保険やがん保険の見直し
などを一度見直しておくことで、将来の不安を減らすことができます。
今回の制度改定は「すぐに困る金額」ではないかもしれません。しかし、「知らないうちにじわじわと効いてくる」タイプの負担です。
FPとしてよくあるご相談に、
「思ったより出費が多くて、年金だけでは足りません」
「気づいたときには貯金が減っていました」
という声があります。多くの場合、その背景には制度変更や医療費増などが関係しています。
制度の内容をしっかり知り、早めに対策を立てることで、将来の安心につながります。
まとめ:不安を減らすために「知って、備える」が何より大切
2025年10月から始まる医療費負担上限の引き上げは、多くの75歳以上の方にとって、少なからず影響を与える制度変更です。
- 対象は年金や所得が一定以上の方
- 年間平均9000円程度の負担増が見込まれる
- 家計への影響は人によって異なるが、対策が重要
制度の内容をしっかりと理解し、控除制度の活用や支出の見直しを行うことで、将来の不安を少しでも軽減できます。
「知らなかった…」ではなく、「知っていてよかった」と思える準備を今から始めてみませんか?

