年金制度はどう変わった?40代50代が知っておくべき令和4年度改正のポイント総まとめ

1. はじめに:なぜ今、年金制度の改正を知るべきか?

「老後2,000万円問題」という言葉を覚えていますか?

あれから数年が経ち、今や「老後4,000万円問題」とも言われるようになりました。背景にあるのは、長寿化と物価上昇。人生100年時代と言われる中、老後に必要な資金がますます増えているのです。

公的年金だけで老後の暮らしを賄うのは難しい時代。

とはいえ、年金がまったく頼りにならないわけではありません。特に40代50代の方にとって、年金制度のしくみを正しく理解しておくことは、将来の安心に直結します。

2022年4月(令和4年)に行われた年金制度の改正は、働き方や年金の受け取り方に大きな変化をもたらしました。

今回はその内容を、わかりやすく解説します。

2. 令和4年4月の年金制度改正の全体像

令和4年度の改正は、老後の働き方や生活設計をより柔軟にすることを目的とした内容です。主なポイントは以下の通り。

  • 在職老齢年金制度の見直し
  • 在職定時改定の導入
  • 繰上げ受給の減額率の見直し
  • 受給開始時期の選択肢拡大(上限75歳へ)
  • 確定拠出年金の加入可能年齢の引き上げ
  • 被用者保険の適用範囲の拡大(多様な就労を年金制度に反映するため、被用者保険の適用拡大が段階的に行われている)

それぞれの変更が、どんな意味を持つのか見ていきましょう。

3. 在職老齢年金制度の見直し:働きながら年金をもらいやすく

まず注目したいのが「在職老齢年金制度」の見直しです。

令和4年4月から65歳未満の方の在職老齢年金制度が見直されました

この制度は、60歳以上で厚生年金を受け取りながら働いている人に対し、賃金と年金の合計が一定額を超えると、年金が減額されるというものです。

従来、60〜64歳と65歳以上でカットの基準が異なり、特に前者は厳しく、「働くと年金が減る」構図になっていました。

しかし、改正後は基準が一本化。令和7年度は、賃金と年金の合計が51万円以下であれば、年金は減額されません。

これは「高齢期も働ける人には無理なく働いてもらおう」という国の方針によるものです。年金を受け取りながら働く選択肢が、現実的になったと言えます。

4. 在職定時改定:年金額が毎年アップする仕組みに

次に注目すべきは「在職定時改定」の導入です。

令和4年4月から在職定時改定制度が導入されました

従来、65歳以降に働いて厚生年金に加入しても、その分の年金額が反映されるのは退職したときでした。

しかし、改正により、毎年10月に年金額が自動で見直されるように。これにより、働いた分が毎年の年金にすぐ反映され、高齢期の就労意欲を後押しする仕組みが整いました。

「年金をもらいながら働き、その分また年金が増える」というサイクルが生まれるのです。

5. 年金の受け取り開始年齢が75歳まで選べるように

従来、60〜70歳の間で年金の受け取り開始時期を選べましたが、改正後は上限が75歳に引き上げられました。

繰下げ受給すると、その分年金額が増える仕組みになっており、75歳から受け取る場合、最大84%の増額になります。

令和4年4月から老齢年金の繰下げ受給の上限年齢が75歳に引き上げられました

一方で、早めに受け取る「繰上げ受給」についても改正が。減額率がこれまでの「月0.5%」から「月0.4%」に緩和されました。

令和4年4月から老齢年金の繰上げ減額率が見直されました

つまり、自分の働き方やライフプランに合わせて、年金の受け取りタイミングをより柔軟に決められるようになったのです。

6. 確定拠出年金の加入可能年齢も引き上げ

公的年金に加えて、自助努力として注目されているのが「確定拠出年金」です。

老後に向けて資産を自分で運用するこの制度は、改正により加入できる年齢が引き上げられました。年金制度の柔軟化にあわせて、「自分年金」を作る時代が本格化しています。

制度改正について

7. 被用者保険の適用拡大:パートや短時間勤務でも厚生年金に加入

正社員だけでなく、パートや短時間勤務の方も厚生年金に加入できるよう、被用者保険の適用範囲が段階的に拡大されています。

社会保険の適用拡大

これにより、非正規であっても将来の年金額が増える可能性があり、就労スタイルにかかわらず、老後の備えがしやすくなっています。

特に女性やシニアの働き方と年金の関係は、今後さらに注目されるでしょう。

8. 今後の制度改正にも備えよう

少子高齢化が進む日本では、年金制度が今後も変わっていくのは避けられません。

「自分にはまだ先の話」と思っているうちに、制度の変化に乗り遅れてしまうこともあります。40代50代の今から正しく情報をキャッチしておくことが、将来の安心につながります。

9. FPの視点:老後資金の不安をなくす3つのアクション

老後への備えとして、以下の3つをおすすめします。

① 最新の年金制度にアンテナを張る
→ 制度変更は今後も続きます。大切なことは、まず「知る」こと。

② 自助努力としてiDeCoやNISAを活用する
→ 公的年金にプラスして、「自分年金」を育てる習慣を。

③ 65歳以降の働き方を今から考える
→ 働きながら年金を受け取るライフスタイルも現実的に。

10. まとめ:老後の不安は「知ること」で和らぐ

年金制度の仕組みは複雑に見えますが、一つひとつ丁寧に知ることで、老後の見通しが立てやすくなります。

「何をしていいかわからない」「将来が不安」という方こそ、今回のような情報をきっかけに、一歩踏み出してみてください。

これからの人生を安心して歩むために、今から少しずつ、準備をはじめてみませんか?